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医学博士/小児科専門医 平岩幹男氏

略歴

東京大学医学部卒業、三井記念病院、帝京大学小児科、戸田市立医療保健センターを経て現在に至る。2007年には、相談や執筆により力をいれるため Rabbit Developmental Research を設立。
医学博士、小児科専門医、小児神経専門医、日本小児保健協会常任理事、日本小児科学会監事、東京大学大学院医学系研究科非常勤講師。
2001年母子保健奨励賞・毎日新聞社賞受賞、皇居参内。
著書に「幼稚園・保育園での発達障害の考え方と対応 役に立つ実践編」(少年写真新聞社)
「あきらめないで! 自閉症 幼児編」(講談社)、「発達障害 子どもを診る医師に知っておいてほしいこと―日常診療、乳幼児健診から対応まで」(金原出版)他多数。

発達障害児のお母さまが、相談に行った機関で 「しばらく様子をみましょう」といわれることが多いようです。

 病院や支援機関で診察後、「様子をみましょう」と言われたという話はよく聞きます。せっかくお子さんの様子に気がかりなことがあって診察を受けたのに、「様子をみましょう」と言われてそうしていたのでは、次にできることの機会を逃してしまうだけであり、非常に残念だと思います。
熱が出たので様子をみる、という場合ならば下がらなければもう一度受診するか他の医療機関を受診します。その場合とは違って、はっきりと目に見えなくても障害ならただ様子をみて時間を過ごしていても改善はされません。

発達障害を適切に診断し、その後の支援まで結び付けられる医師や支援者は現在、まだ非常に少ないと思います。健診などで子どもの発達や成長に何らかの違和感があれば、保護者はとにかく障害に関して知識のある病院や機関を訪ねていくほかはありません。

 ならば、どこに知識の豊富な「良い医師」がいるかとなりますが、こういった情報を集めるのは大変なことだと思います。”ドクターショッピング” 状態になるかもしれませんが、ここはご苦労ですが探して歩いて見付けだしていただきたいとしか言えません。すなわち言い方は良くないかもしれませんが、チャンスは探した者にしか見つかりません。
こうした現状があるので私のところに、新幹線や飛行機を使って外来に来られる方もいらっしゃいます。お金も時間も大変かかることですので、なかなかそこまで環境が許さないことが多いとは思いますが、ただそれ程、お子さんの「今」を大事に何とかしたいと考えている方たちもいます。

子どもはすぐに大きくなってしまいます。「今」「この時」にできることを理解し実行することが大切です。様子をみるといってなにもしなかったり、はっきりした診断を恐れて躊躇したりしている時間はありません。お子さんたちはとても大きな「成長する力」をもっています。適切な療育の時期を逃さないようにしたいですね。

なるほど。 では、ここでいう「良い医師」とは、どういった方をさすのでしょうか。

 私の考える「良い医師」の条件について、2つのポイントをお話しておきましょう。

まずひとつめは、最初に質問のあった「しばらく様子をみましょう」などといわない医師(支援者)であることです。”様子をみる” ということは、具体的な対策案を出せない、ということと同じです。無策のまま時間が過ぎていくことは、将来の可能性を狭くします。
 ふたつ目は、ひとつ目と関連しますが、具体的な対策や説明ができる医師であるかどうかです。それぞれのお子さんがもつ障害特性から社会生活上の困難が起きることが問題になるのですから、そこをなんとかしなければならないことになります。ではその困難とはどういったことなのか、どんな療育を受ければよいのか、するといつまでにどのくらいの改善が期待できるのか。こういった先の見通しを立てながら、説明もできる医師であるかどうかが求められるのではないかと考えています。

 あなたのお子さんは発達障害ですね、とレッテルを貼ることが出来ても、それを剥がすあるいは目立たなくして社会で暮らしていくための具体策までは知らない医師が多いように思います。診断だけしてその後の対応ができなければ、親御さんをただ動揺させ、気持ちを落ち込ませてしまうだけです。